なにもかも 雨のせいにしてしまおう バスの遅れも 心変わりも
雨だから、頭が痛い。雨だから、野球が中止。今日もまた雨だから、もう逢えない。

降らなくては困るとわかっていても、雨の日になると憂鬱になります。気圧が精神に影響するのであれば、スコールのような突然の心変わりにも納得できるのではないでしょうか。


初雪は 屋根も車も野良猫も 人の心も無添加にする
神々の足元で水滴が人知れず華になり、灰色の国を銀へと染める。分子レベルの錬金術。

寒いのは苦手なのに、雪の日はなぜか嬉しい。崇高ささえ感じさせるその無敵の「白」は、目に映る風景のみならず自分の心さえも変えてしまう力強さを秘めているのです。


ときめきと引き換えに得た 安定が半永久に シーソーを漕ぐ
手に入れた途端に火柱は消えてゆく。僅かに残るこの炎は、本当に永遠に燃え続けるのだろうか。

切なくて苦しくて涙する。そんな片思いが好きです。想いが叶った瞬間からテンションは下降の一方。スリルと安全と、どちらが私を輝かせてくれるのでしょうか。


冷蔵庫から出したばかりのビールより 冷たい手だね 待たせてごめん
君の手が物語る時間。2人を隔てていた沈黙の空間。握り締めたその時、もう言葉はいらない。

私は極度の冷え性です。手袋の中、かじかんだ指先は「雪女」とからかわれます。世間の噂通り、本当に手の冷たさと心の暖かさは反比例するのか自分でもわかりません。


どうしても 彼女の顔を見られない 君が選んだ人の笑顔を
にくきもの。雨上がりの砂利道、飛来するゴキブリ、文字化けしたメール、そして「今の彼女」。

少々実話です。その娘が自分より美人かそうでないか・・・どちらが安心できるのでしょうね。目線を向けても物体として認識しないという究極の技で、結局顔は確認しませんでしたけど。


この恋は ひとりよがりの無精卵 あたためるほど 冷え切ってゆく
唐突に産み落とされた冷たい卵。手のひらの中頼りなく、その殻は一体何を守るのだろう

今度こそは本物だと思っても、いつの間にか一人で奔走して消滅してしまう・・・そんな恋愛ばかりです。無精卵も有精卵も産みの苦しみは寸分も違わない事にようやく気付きました。


大堰川 注ぐ五月雨わが涙 水面にまどふ 舟にあらねど
行く当ても無い小舟ほど孤独だとは思わない。それなのになぜか涙が止まらない。雨が痛くて。

雨の「三船祭」に訪れた時に渡月橋で詠んだ歌です。増水した川に不安げに浮かぶ小舟に自身の姿が重なります。いつ流され、転覆してもおかしくない。人生ってそういうものですよね。


リアリズム投げ飛ばしたい そんな夜 僕はひとつの背景になる
夜の中に自分がいる。自分の中に夜がある。虚空に溶け込んでしまえば、もう怖いものはない。

現実に嫌気が差したとき、せめて逃げる場所があればどれほど楽でしょうか。つかの間の無意識に身をゆだねて闇と一体化する。でも完全に溶け込んだ時、リアルの肉体は絶滅してしまうのです。


この先にあるべき2文字 口にすれば なぜかシラけて 五年目突入
君は家族、事実上は。今更法的な認定なんて必要なの?たった一枚の紙だけなのに。

付き合いが長くなり、歳を重ねれば嫌でも意識せざるをえない「結婚」ですが、改めて口に出すとどうにも白々しいものです。「惰性」「別離」・・・この先にはどんな2文字があるのか見当もつきません。


幸せは 空気の中に溶け出でて 光加減で目に映るもの
悲しみに泣きじゃくる君も幸せ。絶望に唇を噛む私も幸せ。なぜならこうして生きているから。

幸せとは日常に溢れているのだと思います。ただそれが私たちの目には見えないだけで。噴水に架かる小さな虹のように光の屈折で一瞬見えたとき、ようやくその存在に気付くことができるのでしょうね。


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