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いまはむかし、恋の行方を左右するのは他でもない「和歌」でした。 燃える想いを伝える時も、別れを決断する時も、貴人たちは和歌に気持ちを託して贈ったのです。 そんな和歌の贈答に憧れた私は学生時代にある人物と和歌の交換をしていました。 同じように平安文学・和歌が好きな人です。どちらが女性でもどちらが男性でもない、架空の恋愛を綴った内容になっています。 その人・・桐生様(仮名)の承諾を頂いたので今回公表させていただきます。 今改めて見ると仮名遣い、文法の相違がありますが、そのまま掲載させていただきます。では、「なんちゃって歌物語」の世界へ・・ |
【背景】
幾度か恋をし、分かり合える人を見つけ、充実感とほんのわずかな物悲しさに浸る夜。なぜか思い出すのでした。
遠い過去、光り輝く幼き日々を。振り分け髪の私のそばにいつもいた優しい君の姿を。少し年上の君が教えてくれたのは珍しい虫の名と、「恋」なんていう奇妙な感情。
逢えないから逢いたい。懐かしいから愛おしい。今、君はどんな姿で誰を想うの―
桐生「雲居なす 遠きにおもふ はつ草や 今いかばかり 花をさかせむ」
はるか昔に心に想っていた幼い人。まだ芽吹いたばかりの若草だったけど、今はどのような人に成長したのでしょうか。
返し
鈴宮「なつかしき 音つたへけり あまつ風 いかにとどけむ 花のたよりを」
天駆ける風に乗り懐かしい人の消息が届いたけど、私の近況をどのように伝えればよいのでしょう。それなりに花は咲いているけれど。
【背景】
夢か現実か。それさえ確かではありません。それほどまでに儚くも美しい、そして切ない夜でしたから。
憶えているのは漆黒の夜空と、朧月の頼りない明かりに浮かぶ桜の仄白さと、微かに聴こえる管弦の音。君の残した香りをまとい、嫌味なくらいリアルな朝を迎えた今、自分の記憶さえ信じられなくなりました。
長い夢の終わりはなぜこんなにも気だるいのだろう。
鈴宮「春の夜の 長き夢からさめてなほ うつつにあらず わが心かな」
長く切ない夢からとっくに覚めたというのに、いまだに迷っているのです。幻と現実の境界線を。
返し
桐生「うつつにも 夢にもあらぬ わが身なれば はやわすらるる 春をまつ間に」
現実でも夢でもない曖昧な存在の私の事など、忘れてしまうのでしょう。次の春が来るまでには。