愛知県鳳来町と聞いてピンと来る人は少ないかもしれない。しかし「長篠の合戦」と聞けば日本史に疎い人でも何となく記憶にあると思う。その長篠の合戦の舞台こそ、その鳳来町なのである。今だから言えるが愛知県民でありながら私はその事実を知らなかった・・・武士であるご先祖様には申し訳ないが平安以降の日本史は大の苦手科目。そんな私が鳳来町で毎年5月に開催される「長篠合戦のぼりまつり」の合戦行列に参加した理由はただ一つ。姫の衣装が着たいからに決まっている。
合戦行列の参加条件は当日朝6時半に現地集合できる人&衣装での行列に耐えられる人というもので、居住地など詳細な条件や写真審査などは無い。応募者多数の場合は厳正なる抽選で決定される。決してくじ運が良いとは言えない私なので、鳳来町観光協会から
の当選通知を受け取った時は正直動揺した。大きな声では言えないが落選するものだと信じ、全く予定を立てていなかったのだ。(そんな奴が応募するなよ・・・)
ちなみに行列の配役はこちら。私が射止めたのは雪姫の役であった。で、雪姫って誰?・・・という話になるのが無知の悲しい性。しかし心配は無用、参加者向けの事前打ち合わせのときに配られた冊子にそれぞれの役に関する詳細が記載されていた。それによると―
武田勝頼の先の正室。信長の妹の娘であるが、信玄の養女として武田家に送り込まれた。永禄8(1565)年勝頼に嫁ぎ、同10年信勝を生んだが、産後が悪く死去した。
というキャラらしい。その名が表す通り、雪のように儚い姫君・・どう考えてもミスキャストではあるまいか。それというのも応募時に希望する役を記入せず「姫なら何でもいいよ」と意思表示した故の結果である。後日聞いた話では、とりあえず女性応募者の中から4人選び、適当に振り分けたそうなので・・・。まあ、黙っていれば薄幸顔(うすいさちよ@おじゃる丸似)なので良しとしようではないか。
「当日はきっと晴れます。私が晴れ男ですから!ハゲ男ではありません!」と明らかにハゲ男(ごめんなさい)の観光協会役員さんが公言した通り5月5日合戦行列当日はまさに五月晴れであった。上質な衣装を使用するため雨天だと中止せざるを得ない合戦行列であるが、ここ数年は晴天に恵まれているという。武将達への供養の賜物か、はたまたハゲ・・失礼、晴れ男のパワーなのか。朝日が注ぐ中、町役場に向かう車窓から妙なものが見えた。この町のシンボルキャラクターであり愛知県の県鳥に指定されている天然記念物のコノハズクの看板のような物体である。町のいたる所にコノハズクをモチーフとした物があるが、今となっては生息地である鳳来町でさえ姿を見かけなくなったらしい。少し寂しい話である。
低血圧の私は早朝は意識朦朧。しかし、行列参加者の控え室である役場の二階に到着した瞬間、一気に覚醒した。そこには一足先に着付けを始めていた武将役の皆さんが!打ち合わせの時は普通のおじさんだと思っていた家康役の方も堂々たる風格で素敵である。彼らの姿をもう少し見ていたかったが、自分の支度もあるので女性用の控え室に急いだ。
今回、着付け・メイクを担当してくれるのは地元の美容師と思われるおば様とその娘さん、そしてお手伝いの女性数名であった。以前は武将の皆様にもメイクをしていたそうだが、手間などを考えて現在は姫役のみという事になったらしい。
女性控え室は二間続きの和室で、4人が支度をするには十分であった。机の上にはそれぞれの姫の名が書かれた紙があり、その下に衣装が並べられている。私が着装させていただく雪姫の衣装はピンクの小袖に白地の打掛というかわいらしい色目のものであった。濃姫は赤、亀姫は緑、瀬名姫は黄・・・と色とりどりで、畳んで並べてあるだけでも非常に華やかな光景であった。
メイク方法は白塗りというよりは映画、舞台風であり大幅に元の顔立ちが変化することはなかった。まず羽二重で髪をまとめて1人ずつメイクをする。時間にして15〜20分ぐらいだったと思う。おば様たちは雑談に花を咲かせていたが、口だけでなく手も動かしていたのはさすがであった。顔だけでなく手にも白粉をはたいてメイク完成。京都の変身店のように鏡をみながら・・・という訳ではないので完了まで自分の姿が見えず少々不安を抱えながらも流れ作業で着付けへ進む。