平安装束体験所で白拍子体験


※現在(平成20年)は装束の種類、料金等が大幅に変更されています。詳細は店舗HPでご確認下さい。

「る○ぶ」などの京都ガイド本を開くと舞妓体験をはじめとする時代衣装体験施設の種類の多さに驚かされる。それだけ多くの人々に認知され注目を集めているジャンルだということであろう。今や観光の定番となった変身体験施設の中で『平安装束専門』という看板を掲げている所があるという情報を入手した。その名も「平安装束体験所」・・・非常にシンプルで的確なネーミングである。

平安装束と聞いて黙っていられない性質の私が件の体験所を訪れるために上洛したのは早咲きの桜が都を彩り始める3月下旬のことであった。旅行ガイド等にはほとんど広告を載せていない店なので情報収集の手段は専らインターネットであった。体験所を運営しているのは神祇装束司の平安装苑(株)であるという。すなわち、写真撮影用とは違う考証に基づいた装束を着ることができるのである。となると心配なのが価格の問題なのだが、自社製の装束ということで非常に良心的な価格設定(その後、価格変更があり現在は若干値上がりしている)となっており安堵の思いで予約の電話を入れた小心者の私なのであった。今回着装するのは白拍子の装束である。翌年の大河ドラマが「義経」という事を聞き「そういえばまだ白拍子は体験していないなぁ」と思い出したのだ。

予約の時間まで余裕があったので以前から切望していた風俗博物館へ立ち寄りプチ平安体験 を楽しむ事が出来た。体験所の場所は京都御苑の南に位置し、碁盤の目状の小路が入り組んだ少々わかりにくい所のため予約の際に丁寧に道を教えていただいた。
「先日も道に迷われた人がいてはりまして・・・」などと言われたものだから体内ナビが誤作動しまくりでリコール対象状態の私は一気に不安になった。しかし意外にスムーズに到着でき、自分もまだまだ捨てたものじゃないな、と低レベルの自画自賛に浸るのであった。

体験所は一見普通の民家のようで看板もそれ程目立たないため見過ごしやすい。ご主人と思しき男性の案内で更衣室に通されたが、外観のみならず内部も極々一般的な家で自宅の一室を開放していますという状態であった。
そこでようやく登場したのがこの体験所を切り盛りし、着付け・撮影を担当する奥様であった。正直な話、「神祇装束司」の肩書きから「一見さんお断り」的空気をかもし出す我々庶民とは一線を介した雰囲気のご婦人を想像していた。しかし、こちらの奥様は非常に気さくな方で、失礼を承知で例えるなら「隣のおばちゃん」とか「友達のお母さん」といった感じの雰囲気で安心感を感じる。
この庶民派マダムは登場するなり慌てていた。どうやら私の前の予約の人たちの撮影が長引いているらしい。特に急いでいない旨を伝えると「すみませんねぇ。着替えたらゆっくり写真でも見ていて下さい。」と言い残し足早に去っていった。その物腰にいい人キャラの予感を感じ、期待が膨らむ。
用意された白衣(通常のものより上質だった気がする)に着替えた後、マダムのお言葉に甘えメイク道具(ここは衣装着装のみの体験なので必要ある人は自分でメイクをするそうだ)と一緒に机の上に並べられたアルバムに目を通した。この体験所で装束に袖を通したお客さんたちの写真が整然と並んでいる。修学旅行なのか大人数で体験に来た人たちの賑やかな様子に、今日こうして孤独に上洛している我が身が心底情けなくなり空しかった。
いい感じに感傷に浸っている頃、マダムに声をかけられた。
「あの・・良かったら前の人たちの撮影見ていかれます?」そう言われて私は二つ返事で見学を申し出た。多少寂しいのもあったが、装束を見られる機会があれば逃したくは無い。マダムの先導で廊下を進む。奥の和室の襖が開かれ、飛び込んできた光景は過去に何度も平安装束を目にしている私をも十分に感激させるものであった。

目にも鮮やかなる十二単に身を包んだ麗しき女性二人組。何が素晴らしいって十二単×2という構図である。他の体験施設では大抵十二単は一組しか用意していなくて一度に着られるのが1人だけである。だからこの「絵」はある意味貴重でなかなか見られないと思う。葵祭でもフル装備の十二単は斎王代だけで女官は袿だし。そしてまた2人並んだ際の華やかさと言ったら・・・とすっかり舞い上がっている私を正気に戻したのは部屋の片隅に置かれたある物体である。
(か・・髪の毛!!?)
貞子やら呪怨を髣髴とさせる光景に一瞬ヒヤリとしたが何て事は無い。希望があれば借りることができるカツラであった。マダムいわく、お客さんの中で自前カツラを持参する人いるので参考にして用意したそうだ。平安風・・・と言うより腰までのワンレングスである。かく言う私もこの日は白拍子装束に合わせて付け毛タイプのウィッグを持参している。装束の魅力を左右するには髪型も重要だと思うのだ。

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