我がホームタウン名古屋と、心の故郷・京都は新幹線で40分前後の距離。昔は何日もかけて旅をしていただろうけど、現在は余裕で日帰りができるなんて恵まれたものである。そこで私が計画したのは「春の京都・日帰り時代衣装満喫ツアー」。宿泊代を削って浮いたお金で時代衣装体験をハシゴしようという、ある意味贅沢なプランである。
実行したのは桜シーズン真っ盛りの4月初旬。今回同行するのは時代衣装体験の後輩J君である。神戸在住の彼は月に何度も京都に遊びに来ているという羨ましい身分なのだが時代衣装体験は今回が初めてらしい。以前から切望していたそうだが、なかなか機会に恵まれなかった、との事。
そんな初心者の彼にお薦めなのが時代衣装体験の老舗にして尚、根強い人気の「東映太秦映画村」内の「時代劇扮装の館」。扮装の種類の豊富さは他の追随を許さない。
そして今回「ハシゴ」する2件目のお店は数ある舞妓体験店から苦労して選んだ「ゆめみる夢」。このメルヘンチックな店名に一瞬戸惑ったが、常日頃から利用していて信頼を置いている舞妓体験情報のサイトでの評判を聞いて今回利用させていただく事に決めた。
当日の計画は完璧だった。限られた時間で二つの時代衣装体験をこなすには徹底した下準備が欠かせない。特に今回は太秦と清水という離れた場所だけに、交通機関の手配も準備万端だった。しかし、当日京都駅で合流する予定だったJ君の到着がJRの事故により大幅に遅れたのだ。急遽、阪急で上洛する事になった彼に合わせて阪急大宮駅での待ち合わせに変更。しかも天気は雨、苦労して合流出来たときは感動だった。
扮装の館の方には事前に遅れる旨を連絡したものの、ゆっくりとはしていられない。慌てて太秦に向かい、映画村の門をくぐった時はもうすでにぐったりとしていた。

平日、しかも雨天のため人影はまばらであった。疲労困憊のはずなのに、これから時代衣装に着替えるとなるとテンションが上がる。「時代劇扮装の館」に到着し、アルバムから衣装を選ぶ。こちらには何度かお世話になっているが、この選ぶ時間がなんとも楽しい。「何にしようかな」などと言っていたが、実は最初から決めていた。その扮装とは千姫。過去に定番の「あんみつ姫系」のお姫様を体験した時、裾を引くタイプの着物のために移動の際に褄を持つ必要があり非常に面倒だった。その時に千姫に扮した友人は普通の現代と変わらない着物に半幅帯、身軽であった。そんな経験から、次は千姫、と心に決めていたのだ。そしてJ君は助さんに決定。若いのに渋い。新撰組などの方が良いのでは?と老婆心から思ったのだけど、本人が希望しているのでそれ以上は追及できまい。
「扮装の館」のすごい所は手際の良さ。浴衣に着替えると流れ作業のようにメイク室に連れて行かれ、頭に羽二重を巻かれる。こちらのメイクは完全な「時代劇風」。舞妓をはじめ他の時代衣装体験では殆どが白塗りだが、「扮装の館」ではドーランを使って役者さんと同じメイクをして頂けるのだ。個人的にはこちらのメイクが過去で一番気に入っているかもしれない。あまり元の顔立ちからかけ離れない、でもしっかり「時代劇顔」になれる。
隣では嬉し恥ずかしメイク初体験のJ君が一塗りごとに助さんに変身している。仕上がりが楽しみだ。
他の装束変身系のお店ではメイクしながらスタッフの方々と世間話、というパターンが多いのだが、こちらでは皆さん黙々と作業しておられる。よく言えば真剣に、悪く言えば少々無愛想な感も否めない・・・これが率直な印象ではある。とは言え、先ほど述べたように本格的な時代劇メイクには毎度敬服させられる。カツラを乗せられた鏡の中の自分の顔は(元々の造作はこの際無視するとして)華やかな中にも強さを感じられる戦国の姫になっているではないか。