めでたく斎王まつりへの参加が決まって五月の休日にある「参加者打合せ」のため、私は再び明和町・「いつきのみや歴史体験館」へ向かった。 久しぶりに再会した「遠距離チーム(奈良のIさん、静岡のSさん、名古屋のKさん)」メンバーで祭りに対する意気込みなどを熱く語り合った。 Kさんは采女、Iさんは内侍とそれぞれ希望していた役に決まったようで喜んでいた。
カツラを被るための「頭回り測定」が終わると、実行委員さんから簡単な祭りの流れを説明された。 この年の斎王まつりは6月の4日、5日の2日間開催される。 1日目は「禊の儀」と「前夜祭」。2日目はメイン行事である「斎王群行」が行われるというスケジュールで2日間ともほぼ1日中装束を着たままでいられる。それだけでもかなり楽しみで、予想より長引いてしまった打合せによる下がりまくったテンションをなんとか回復されることができた。
それから1ヶ月。6月4日(土)の早朝、私は同じホテルに宿泊していたIさんと一緒に斎宮駅まで向かった。
ここで一つ難儀なことが・・・化粧の関係で、洗顔後肌に何もつけない状態で来るようにと言われていたのだ。メイク取ると本当に見れたものじゃない、顔色悪い病気のオバサンみたいな素顔を晒し、さらに化粧水などの保湿も禁止のため皮膚は乾燥しまくり。
恥ずかしいというか情けない。
斎宮駅には実効委員会のバスが待機していて、祭り準備会場となる体育館のような立派な建物まで送ってくれた。
会場に続々と現れる「すっぴん」の女性たち。でもみんな綺麗&かわいいんだよなぁ・・・ 建物の広い部屋の扉を開けて、一瞬にして心奪われる光景に出くわした。床に並べられた色とりどりの装束!青海波紋様が印象的な采女装束を見て「ああ、これを着られるんだ」と感激した。まつり 様々な色柄がある女官の装束は基本的に」先着順に選べるらしい。早起きは三文の得、とは良く出来た言葉だと実感した。
まず最初はメイクから。控え室で持参した浴衣に着替えて別室のメイク室に案内された。
和化粧特有の匂いに、今まで参加してきたお祭りや京都の変身スポットを思い出して懐かしい気分になった。
メイク担当の方は記憶が定かではないけど4〜5人いたと思う。着替えが済んだ人から順番にメイクしていくのだが、役柄によって担当者が決まっていた。
斎王、女別当、采女は「先生」みたいな現場を取り仕切っている人が担当していた。
役によって目元に紅を差すとか微妙に違うらしい。前回采女だったIさんに「采女は若々しいメイクでしかも上手い人にやってもらえる」と聞いていたので「采女って各地から集められた美しい女性だからメイクも違うんだろうか」と、オバサンのような疲れきったすっぴん面を棚に上げて現実逃避していた。
采女メイクが済み、今度は衣装の着付けに取り掛かる。メイクだけでなく着付けも斎王、女別当、采女は「先生」が担当する。斎王は十二単(略式ではなく本格的)、女別当は袿袴、そして采女は女性神職装束を思わせる独特の装束。
青海波と薄地の御忌衣のおかげで一見涼しげに見えるがそんな甘いものじゃない。
枚数的に4枚は着てるので暑さは相当である。喉が渇くが、皆なるべく水分を取らないように心がけていた。
理由は、お手洗いに行く回数を減らすため。装束を着てしまうとなかなか行きつらいのだ。
それでも袴が「スカート型(股の部分が分かれていなくロングスカートのような構造)」の人は袴の裾をからげて出来るけど我々采女と女別当の装束は「ズボン型(股の部分が分かれている)」なのでちょっとしたテクニックが必要なのだ。
装束が着崩れないように注意しながら、片方の脚をそーっと上に持ち上げ、もう一方の足が入ってる袴の片方部分に入れる。
つまり2つに分かれた袴の足部分の一方に両足を入れてしまうという感じ。結構疲れるし、足がつりそうになるのであまりおすすめできないが、むやみに我慢すると病気になるのでその方法で難を逃れた。
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儀式が終わると次は特設ステージで盛大に行われる前夜祭が控えている。儀式が終わったのはまだ真昼。夜までどうやって時間をつぶそうか・・
そして一度は立ち去ったはずの雨雲が再び現れてまたしても強烈な雨を降らせてきた。
今度こそ中止か・・・そんな空気が流れたけど神は見放さなかった。
でも雨上がりの濡れた土を踏むと足袋に水が染み込んだりして結構大変なのだ。前夜祭のステージ前には斎王一行を見に多くの人が集まっていた。
天気が不安定な梅雨の夜空にステージが眩しい光に包まれていた。それを見て「ああ、お祭りに参加してるんだな」と今更ながらに思ってしまった。
前夜祭の流れは、まず私たち出演者が二人ずつステージに出て名前を紹介されるという微妙に恥ずかしい展開だった。私は同じ采女であるSさんと一緒にステージに上がった。なんか緊張していて良く覚えていない・・
出演者全員がそろったところでいよいよ斎王さんの登場である。なんかもう、イリュージョンというかプリンセス・テンコーでも出てきそうな幽玄的な雰囲気であり、一応出演者側に属していながら観客の心理で見とれていた。
この日の行事が全て終了したのは、雨で一端中断したせいもあってか予想よりも遅い時間であった。
近隣から参加の人たちはともかく、我々遠方からの旅人は松阪市にあるホテルまで戻らないといけないので疲れ切って途方に暮れていた。
次の日はいよいよ「群行」があるので早めに休んで体力回復したい。
そんな私とIさんは運良く松阪駅までバスで送ってもらうことになり非常に助かった。
その後、私とIさんはホテル近くのコンビニで夜食用のざるソバ等を買ったのだが・・・そんな自分たちが急に情けなくなってきた。
お祭りメイクを落としてすっぴんで夜中にコンビニ食品。それをホテルの一室で一人食べるむなしさ・・・
「なんかいかにも『負け犬』の生活だよね」と二人して落ち込んでいた。
こうして斎王まつり第1日目は無事に終了したのであった。