映画村での興奮冷めやらぬまま、私達は次なる装束体験に向けて移動を始めた。今回お世話になるのは舞妓体験のお店「ゆめみる夢」。今や京都の名物とも言われる舞妓体験ゆえに、扱っているお店は数知れない。中でも本物の舞妓さんが行き交う祇園や散策に好適な清水付近は舞妓体験店の激戦区となっている。その様な背景もあり、我々ユーザーの立場としてもお店選びには毎回頭を悩まされるのであった。
散々考えた結果「ゆめみる夢」に決めたのはやはり「体験者の声」が大きかった。お世話になっている舞妓変身関連サイトの掲示板等での評判、そして予算を考慮し、予約に踏み切ったのである。
映画村での扮装は何とか楽しめたものの、朝のアクシデントの影響はまだ尾を引いており当初の予約時間に間に合わない事態は避けられなかった。遅れる旨を連絡し、散り始めた桜を堪能する暇も無くお店へ急ぐ。二年坂だの三年坂だの入り組む道は同行のJ君に任せる。
八坂の塔から少し下った所に控えめに店を構える「舞妓体験 ゆめみる夢」。風情ある軒並みの雰囲気を壊さない、素敵な外観のお店であった。中に入ると、お支度が整った他のお客さんが3名程写真撮影をしていた。皆さん本当にかわいらしくて、今から自分もこの様な舞妓さんになれるのかと思うと、にわかに興奮してきた。
まず、二階にある控え室で肌着に着替える。背中の部分が広く開いていて、普通の和服用の肌着とは随分と違う感じがした。貴重品一式を持って一階に戻り、メイクの前にコンタクトレンズを外す。他の変身体験のお店では今までコンタクト装着したままメイクをしていたが(メイク担当の人が目元を塗る時に相当気を遣っている気配)こちらでは外すのが前提のようで多少面倒にも感じた。が、実際にメイクが始まると、とてもじゃないけどレンズを外さないと無理だと実感した。
このお店では今までに私が体験した「舞台化粧・時代劇メイク」とは全く違う、まさに舞妓メイクというジャンルの方法で、下地として蝋のような固形状の鬢付け油を柔らかくした物を塗りこむ。そう、塗るのではなく「塗りこむ」のだ。普通のクリームよりも硬いので顔全体に伸ばすのはなかなかの力作業で、まぶたの上も上下左右に皮膚が引っ張られる。もしコンタクトレンズを付けたままだったら確実にズレるだろう。
こちらのスタッフの方は皆さんとても話しやすい感じで、私はメイク中も先ほど体験した映画村での扮装や、先回の京都旅行での源氏物語プランについて熱く語らせて頂いた。そんな扮装マニアの怪しい客の扱いにも慣れておられるのか、お話しつつも丁寧にメイクを仕上げてくれる。
舞妓体験店には各店の特徴がメイクに現れるのだが、ゆめみる夢の場合は特に目元が個性的と言えよう。和風のメイクと言うと、切れ長な目元をイメージする場合が殆どだろうけど、こちらではアイラインをかなりくっきりと描き、鏡を見てびっくりする程のパッチリ目に仕上がる。メイク終了後にコンタクトレンズを装着し、改めて己の姿を見た私は良い意味で呆然としたものだ。普段貧相な目元がコンプレックスなのに今の自分はまるで浜○あゆみのような大きな目・・・ちょっとしたプチ整形並みの変化に感動の瞬間であった。