平安装束体験といえば京都の独壇場かと思っていたが、東海3県下にも本格的な装束体験が可能な施設を発見した。かつて伊勢神宮に仕えた斎王にゆかりのある三重県明和町・いつきのみや歴史体験館である。
こちらでは破格の値段で装束着装体験ができるとあって、かねてから並々ならぬ関心を抱いていたが近くて遠い三重県・・・足は遠のく一方であった。そんな私に明和町訪問を決意させたイベント、それは平安婚礼体験である。HPでこの告知を見て「これはやらないと後悔する」と直感した私はもちろん独身である。しかも結婚予定など全く無く、平安時代だったらもう翁・媼と呼ばれる年齢の両親を心配させる日々を送っていた。それなのに「婚礼」・・・?と思われるだろうが、あくまで体験。ブライダルフェアの模擬挙式だと思ってもらえれば問題無い。
平成人として生まれた現在、絶対に体験する事など無いと思っていた三日夜餅の儀・後朝の歌に舞い上がる私に目を付けられた不幸な御方こそ、前回の光源氏姿で王朝イケメン振りを発揮して下さった貴輔中将様であった。当初「なんで嫁でもない人と婚礼体験を・・・」と至極正統な反論を述べていた中将様だが、一度装束を着装し、その魅力に気づき始めたのか、思いのほか交渉はスムーズに運んだ。かくして、我々は平成15年6月18日に平安婚礼体験を申し込んだのであった。
体験当日の前に、細かな打ち合わせが必要との事で5月中旬、私はいつきのみや歴史体験館を訪問した。松阪から更に南下した斎宮駅を下車すると、世にも立派な寝殿造りの建物が目に入る。この建造物こそが平安の文化を今に伝える各種体験施設なのだ。しかも入場無料!!
雰囲気に圧倒されながら事務所に案内され、この施設の館長さんと当日の着付け等を担当される先生にお話を伺った。当日のプログラムを見ると、思っていたよりも大人数向けと言うか、本当の結婚式のように参列者がいるという設定で組まれていた。館長さんのお話によると、過去に体験されているのは本当のご夫婦がほとんどで、銀婚式の記念として行われる人もいたらしい。写真を見せてもらうと確かに賑やかな雰囲気である。私のように、装束・文化が好きだからという動機の人は稀のようだ。
そんな私にも館長さん、そして先生は非常に親切にして下さった。名古屋から二時間近くかけて来館する我々の為に、わざわざ駅に電話をして最も効率の良い乗り換え電車を調べて頂いた上に、集合時刻を若干遅らせて頂くという手間をかけさせてしまい誠に頭が下がる思いであった。(後日、人に話したら「大女優の楽屋入り並みの待遇」と言われてしまった。申し訳ない・・・)
打ち合わせを終え、その日最後の装束着装体験に参加する事にした。今回着装するつもりなのは「直衣」。一度男性装束を着てみたいと思っていたのだ。予定時刻まで余裕があったので、改めて館内をじっくりと見回ってみた。御簾、格子、几帳・・・憧れの平安インテリアに囲まれた館内で、ひと際目立つのが葱華輦(そうかれん)と呼ばれる輿。当時は天皇や斎王しか乗れなかったこの乗り物が、こちらでは乗り放題。実際に乗ってみると若干狭いものの「まったり気分」を満喫できる。